日本の農村の原風景ともいわれる「里山」は、農地と山が近接する日本ならではの風景である。そこでは農用林として、人の暮らしともりやはやしが共存していた。失われかけている人と自然とのきずなを取り戻すきっかけとして、それを見直してみようという思いをこめて本書の著者が造った語が「里山」であった。里山は、自然とヒトとの微妙なバランスの上に成り立っている。古人は経験的にそのことを知っていたが、いまでは森林生態学の研究成果でより合理的に知ることができる。森林と長く深くまじわり、豊かな学識をたたえた森の学者による、さりげなくも滋味あふれるエッセイ。