一九世紀後半、近隣農村からの膨大な移住者を呑み込んで過密化した帝国首都ベルリンは、河川、大気、土壌等のあらゆる汚染と各種疫病にさらされていた。人々がその惨状を見据えて立ち上がり、やがて「汚水処理」という一連の問題群を獲得し、国家と社会の総力を傾注したプロジェクトとしての下水道整備へとたどり着く模索と苦闘の過程を、当時の資料と古今の文献に基づいて克明にたどる。政治・経済・財政史、人口問題、医学・科学技術史等々、さまざまな学問領域が織りなす沃野から下水道建設と都市浄化という都市生活の根源的なテーマを照射する。