日本の安全保障をめぐる議論がふたたび盛んになりつつある。だが右派と左派の論争はいつも噛み合わないし、実は中身もない。なぜか?本書は、真の戦略をめぐる議論の実現を阻んできたのは「九条と日米安保の組合せ」だったとみる視点から戦後史をたどり、可能性のあった唯一の例として九〇年代の日本の経験に着目する。そこではリベラルな対外関係と憲法観の変化が生じていた―。安全保障論議の不毛、左右の反目、過度の対米依存を脱するため、九〇年代を参照し、戦争への反省に立った改憲を視野に入れつつ、近隣国との協力について明快で具体的な将来像を示す提言の書。