高度経済成長末期以降、病院死の増加にともなって、死亡後の処置を含めた看取りの技術や知識は、家庭からも地域からも急速に忘れ去られていった。多くの人びとが、住み慣れた自宅での死を望みながら、やむをえず病院で死を迎えている。本書は、近代日本における看取りの文化と地域医療の実態を、地主・開業医・巡査の日記や小説・病院資料を通して明らかにし、「遠ざかる死」の時代にあって、死を見つめ、考えることが生を豊かにするという観点から「看取りの復権」を提唱する。